下高平の西殿はニシドンと言われていた
(津浪に残された泉地区の田の神様を尋ねる)
二十三夜塔は嘉永のものである
あとのものは年号がわからなかった
南相馬市原町区高平の五輪の塔の謎 (南北朝に由来して西殿は相馬氏の館があった所)
1848年嘉永1年
1853年嘉永6年
1868年明治1年
今日下高平から泉の方に行ったら日本の木が見えた,その下に碑があるのが見えた
それでそこに確かめに行ったらそこは社の跡であり碑がいくつもあった
津浪で流されたがこの碑と二本の木が残ったのである。
そこで近くで草刈りしている人に聞いた
「ここには神社があったんですか」
「田の神様です」
「神社というものではなく小さな社(やしろ)でしょうか)
「この地区には泉には七つあってみんな田の神様を祭っているよ」
この田の神様というのがどういうものか良くわからなかったが稲作の神であることは確かである。
「二本の木が残りましたね」
「他にも木があったけど枯れたんだよ」
「そうですか,五葉松は枯れなくて良かった」
「あれもわからないよ」
「枯れるということかな,松は強く根を張らないから津浪にも弱いし塩水をかぶると塩分にも弱い」
「そういうことかもな」
「鹿島の右田の松原の一本松も枯れて切られましたから」
五葉松はまだ枯れてはいない,だからまだ残るのか?あそこまで津浪が来ていたのである
ここは地形的にも津浪の被害があった,床上まで来たという
それより新田川の岸辺に家が結構あってそれが流されたのである。
それで自分のプログを見た人がその写真を見て自分の家だと言っていたことに驚いた
そこの家はすぐ近くだったのである。
「ここの家は古いですか」
「四代目です」
「そう古くはないのかな」
「私の家は加賀から来たんです」
「そうでしたか,真宗系統,南無阿弥陀仏系統はこの辺では多いです
萱浜には特に多いみたいです」
相馬藩の歴史となるとまず天明の飢饉のときその前の時代からも宝暦からも飢饉があり苦しんだ、その時加賀であれ越中であり富山県とか新潟県から福井県などから移民がきて
飢饉の跡に入り開墾して相馬藩は飢饉から立ち直った
相馬藩の歴史はこの真宗系統の移民によって成り立っている
そういう歴史がある藩だということである。
だから相馬藩の歴史をたどると三分の一はそうした移民で構成されているともなるのである。
「下高平の方に西殿(にしどの)とあるんですが」
「いやあれはニシドンとこの辺で言っていますよ」
「ニシドンですか」
「そう伝えられてきたんですよ」
「なるほどそう伝えられていたんですか,西郷どんとかもいいますから」
「ところであなたはどこの人」
「鹿島です」
「西さんが良く来てましたよ」
「歴史の先生でしたが死にました」
あの人も西だったけどこれとは関係ない,でもなんだか符号しているから奇妙だった
最近死んだのである。ただあの人の郷土史とかの研究で何か残したのか?
あの人は地元で生まれたのではなく他から来た人らしい
高校の時習ったことがあったがその時は自分は歴史に興味をもたなかった
それより自分は勉強とか学校が嫌でたまらなかった
まず勉強は興味をもたないかぎりだめであり無理やりしたら余計に嫌いになるのである。
それはともかく九州の方言で殿をドンと言っている,ではなぜここで西殿をニシドンと言っていたのか?
それはなんらかで九州方面の人がここに相馬氏の一族に入っていたのか?
相馬氏といっても実際は多方面な人がまじっていたのである。
だから方言も伝播する,どういうわけかこの辺に九州地方の名が地名化しているのがある小池に薩摩内とかもある,他にある
方言でも伝播している,深野はフコウノと呼ぶが同じ地名として大阪にありフコウノとはそうした方言が伝播したともとれる,これは大阪方面の方言なのである。
ともかく高平から泉には歴史の跡が地名として記されているし泉はもともと古代から役所があったのだから古い
そして今も西殿がニシドンと呼ばれていることは歴史が継続して生きていることを感じたただ書類から西殿とあればニシドノと読む
でも地元の人がニシドンと言っていたというとき明らかに西の方の殿ということである。それは親しみをこめたものなのか?
泉地区はまた下高平の西殿地区とはまだ勢力として違った地域にあったからだ
ただ泉に住んでいた人もニシドンと呼んでいたのである。
そこはなんらかの中心としてあった屋敷があったのである。
柳田国男が文書だけではない聞き取りから民俗学を起こした,口碑を大事にして聞き取りから歴史を探った,口碑にこそ生きた歴史があるとしてそうしたのである。
文書からだけではわからないものが生きた歴史なのである。
歴史は普通死んだものとして見ることがある,でも地元の人にはニシドンと西殿をまだ言っているときそれが地元でまだ生きていたのかと実感したからである。
津浪後二本の木のなおここに離れじと立ちて夏の日暮れぬ