老人は昔を語ることに存在意義がある
(郷土史でも歴史も語ることから発している)
今日焼香に来た人は自分が知らない自分の家の昔のことを知っていたのに驚いた。
実際はその人は姉とは親しかったが母のことではかかわらなかった。
だから近くにいても6年くらいすでに家に来ていないのである。
どういうわけか困ったときは来ないで死んだときは来る人がいる
話を聞いて一番不思議だったのは自分の兄のことを知っていたことである。
兄は事情あって自分の家に5年間いたがそれが自分が0才から5才までであり自分にはさほど記憶がないのである
それで「、、ちゃん」と兄の名前を言った、それがなんとも不思議だったのである。
なぜならもう兄のことを覚えている人はほとんどいない、交通事故で40才で死んだ、それも集団就職で静岡の方に行って死んだのである。
母の実家の墓に骨は納まっているがこれまた不思議なのは実家で五年間暮らした姪子が一緒にいたことを知らないという、その人は前にも書いたが異常な性格になっていて自分の母に信じられないことを言って縁が切れた。
そして思ったことは人間は一緒に住んでもその人の記憶がなければその人は存在しないと同じになることである。存在しないということはこの世にいなかったと同じなのである。時間がたってゆくと特に死んでしまうとどんどん人間は忘れられてゆくのである。
この人が存在したのかということさえわからないのがいくらでもあるし存在したということを知ってそれが大発見になったりする
もう存在を確かめること自体が一つの発見になってしまう。
だから「、、、ちゃん」と兄の名前までその人が覚えていたことで自分も兄の存在を確認したのである。
なぜなら自分は幼児でありその辺は記憶があまりないからである。
そうなるとそういううに昔を覚えている人は貴重である。
その人は自分より何才年上かはわからない、でも自分の家のことについては一番詳しい人だった。その人は自分の家と深くかかわっていたからである。
そして死んだ姉のことなどを語ったとき何か昔を共有することで連帯感を生れた
やはり昔を共有することは歴史を共有することであり郷土史とか歴史になる
historyだといういうときストリーは物語だからもともと昔を語ることにあった
その昔を語ることが老人の勤めのようになる、そこに老人の意義があるからだ。
人間は死んだら骨になり形も何もなくなる、でもその人を語ることによってその人生きることになる、人だけではないその土地のことでも家のことでも語ることによって生きる
それは郷土史とか歴史になったのである。
ともかく老人になれば次ぎ次ぎに死んでゆく、それよりもう自分が死ぬ番だとなっているだから死というのはもう親が死んでも自分がまもなく死ぬ番であるという意識になるから若いとき親が死ぬのとは全然違う感覚なのである。
自分の同世代のものが膨大に死んでゆく時代になる、だから有名人だろうがなんだろうがそんなに多くの人を記憶できなくなる、身近なものの記憶が大事にもなる
そこに郷土史の意義もあった。
話してみるとその人の親戚も小高の機織り工場を経営して失敗してひどい目にあったと言っていた。自分の母の実家の父も同じだった。
その頃機織りが盛んな時代だからそうなったのである。機織り工場を経営して成功した人もいるが失敗した人もいる、それは当時のブームでもあったことがわかる。
もう一人は自分より三歳くらい年下だが土葬の経験があり野辺送りで焼いた場所も知っていた。それは最後に自分の父親が野辺送りで焼いたことでそのことは鮮明に覚えている
その場所を知っていて気味悪かったといっていた。
とにかく時間がたつのは早い、死ぬとたちたまち忘れられる、そして昔を語ることはその人の存在を確認する作業なのである。そこで何か共有するものが生れる
それが郷土史ともなり歴史ともなる、なぜなら死んだ人は骨となり土となり何も残っていないからである。
そのあとは語ることによって存在を確認するのである。
津波で死んだ人たちもあのとき写真のアルバムを探して大事にしたのは何もなくなってしまったからである。記憶になるものがなくなってしまったから写真を探していたのである
老人は昔のことを延々と語るので若い人はうざいとなるがなぜそうなるのか?
つまりそれが自分の生きたことの証になるからである。
それで自分の姉は死ぬまで従軍看護婦じシンガポールに四年いたことを語りつづけた
認知症になってからは千回も聞いた、同じことをしゃべりつづけたのである。
それは自分の存在を確認するためだった、昔を語らなければ存在意義もなくなってしまうからである
タグ:老人の価値
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