2007年03月21日

郷土史研究の基本(村の新旧を知る)

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郷土史研究の基本(村の新旧を知る)

郷土史研究の基本はその土地の新旧を知ることなのだ。これは意外とわかりにくいのだ。どこが古いのか新しいのか例えば古墳のある場所が古いとみるのが普通であるがその古い場所にも開拓に入植した人々が多いのである。金銅双魚杯が発見された南相馬市の鹿島区の寺内は確かに古い、でもその寺内→小池→じさ原となると小池には入植した人たちが多いのである。実際に私の父は双葉で酒屋に勤めて酒作りをしていた。その仲間が戦後小池に入植したのである。その人と偶然にあって親交を深めた。その上のじさばらになるとここも明治以降入植した人たちの村である。その証拠は何かというと墓の年号をみるとほとんど明治以降でありかなり古い粗末な石くれの墓でも明治以降である。よくみると明治の年号は刻まれていてもまず江戸時代の年号が刻まれているのは極めてまれなのだ。山の奥深くだからそこが古い村だとはほとんどならない、そういう不便なところはあとから入植した人たちが多いのだ。上萱(うえがや)などもあんな孤立した場所だから古いと思うと新しいのである。人間は戦後まもなくでも日本人の生活は農業は基本であり開拓で暮らす人が多かったのである。これは江戸時代からつづいている。隠町という地名が鹿島区で二つある。烏崎と小山田でありこれは隠田のことであり税を逃れるために隠れて作った田のことで地名化したとある。これは江戸時代の地名だから古いのだ。

今回磐城太田から太田川をさかのぼって横手ダムの方に行ったが文久(1864)元治(1865)と刻まれた墓があった。これは幕末であり古い、でも幕末だからすぐに明治になっているのだ。次にさらに奥に入ったところにも粗末な石くれの墓所があったがこれは全部明治時代のものだった。これでわかることは奥に入植した人たちの墓は新しいことがわかるのだ。磐城太田神社は最初に相馬氏が建てた神社だから相当古いことはわかる。でも村の新旧は入り乱れているからわかりにくいのだ。どこでも新旧はわかりやすいようで一番わかりにくいのだ。城のあったところは古いことは間違いないからわかりやすいが他は目安となるものがないからわかりにくいのである。なぜ村の新旧が大事かというと古くから開かれた所は住みやすい適地だった。だから水の便もよく水がきれいでいい米がとれる場所であった。鹿島区の栃窪などがそうである。水に恵まれているから米がうまいのである。一方右田とか原町区の萱浜などは海に近いし八沢浦にしても干拓された場所だから水がよくないから米もいい米はとれない場所である。古くから人が住んだ場所は住みよい場所だったのである。人は初めから住みにくい場所には住まないのだ。阿武隈高原なども昔から住んでいた人は少なくあとから入植した人たちが多いのである。山で暮らすには限られた人しか暮らせない、だから間引きとか子捨てが行われたし私の父のように町に出て丁稚奉公とかさせられた。四国の谷間に子捨という地名が残っていたのには驚いた。姥捨てはまれで間引きとか子捨てが多かったことは確かである。

郷土史の研究というとき何か学問的なこと知らないとできないということではない、郷土史研究は最も身近なものであり基本は家族の歴史だから誰でも関心をもち知るべきものなのだ。自分の家の祖父のことや家の歴史が基本なのである。家というのは少なくても二代はつづいているから百年以上の歴史がある。人間は明らかに歴史的に生きることが人間的なことなのだ。人間は歴史なくして人間たりえない、一代だけを考えて生きていたら人間は存在しえない、人間は長い歴史のなかで意味や価値を帯びてくるのでありそうしないと人間そのものが破壊されてしまう。今だけを生きる人はありえない、なぜなら親がいない人はいないということはすでに歴史を生きているのが人間なのである。最近親戚の人が実の親子なのだが実際は四才までしか一緒にいずあとは別な人生を歩んだ。ところが八五才とかになり誰もめんどうみれないから娘だからめんどうみてくれとなった。金はあったから施設に入れるだけだがそれでも何かとめんどうみなければならずいやになったという、血のつながった親子でも全く一緒に生活をしていない、生活を共にした時間を歴史を共有した時間をもっていないからそうなるのだ。共同の歴史を共有していないからめんどうみる気にもなれないのである。歴史とは長い時間を共有することにはじまっているのだ。民族の歴史となると最低でも千年単位になるからその長さの中で共有した時間が歴史なのである。
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