波ひびき駿河に望む春の富士
春富士や波に踊れる魚かな
白砂に天女の松や春の富士
駿河湾向こうは伊豆や春の富士
早春の伊豆やまじかに春の富士
我が寄らじ雲見や遠く春の富士
ゆくらかに場所を変えつつ春の富士
静岡や新幹線に春の富士
旅長しその日は遠く春の富士
恵まれし旅の日長し春の富士
晴れやかに富士を見ゆかな春の日に
なお生きてあれ日(ひ)の本(もと)の国に
松静か我がよりにつつ長々と春の富士見ゆ心おきなく
初富士へ荒濤船を押しあぐる
石田波郷
陸の富士海の富士見て年新た
太田嗟
伊豆から駿河湾とかへ旅したのは相当前である。20年以上は前である。その時のことを思いだししてまた俳句を作った。その時は作っていない、作ったとしても記録のような俳句だった。その時作った俳句であまりいいものはないが記録としてはいい、旅とは何回も言ったように記録が大事なのである。ほんのちょっとしたことでも記録してあるとそこから旅の記憶が蘇るからだ。そしてこうしてまた俳句を作ったりしている。駿河湾に出たとき鮮明に記憶しているのは魚が波によって打ち上げられていたのだ。生きているような魚だったのだ。
相模国に至ったとき、倭建命たちは相模国造の放った火に取り囲まれてしまいました。そのとき、倭建命は、叔母の倭比売命から与えられていた草那藝剱で草を薙(な)ぎ、袋を開いて中の火打石で火をつけ相手側の火を押し返して野火から脱出し、逆に敵を焼き殺しました。
それゆえ、この地を焼遺というようになりました。
(日本書紀では駿河国の焼津とされます)
「さねさし 相模の小野に 燃ゆる火の 火中に立ちて 問ひし君はも」
この歌も有名である。ここは劇的に海からのドラマが展開された場所なのだ。弟橘比売命が、これは海神の怒りを静め倭建命を救うために身を投げたというのも実際にただならぬことがおきて伝説化したのである。地形的に船で上陸するのに駿河湾は適していたからこそ焼津に上陸したのである。
この時撮った写真はない、でもその時の伊豆と駿河湾のことは脳裏に刻まれているインタ−ネットで写真を見るとその時の光景が蘇ってくる。西伊豆を回って駿河湾に出た。そして何度も雪の残る春の富士を十分に見たのである。その時時間は十分にあった。その時間こそ旅には最も必要なものだった。旅はまず勤め人のように時間が制限されたらできないのである。今になって介護で勤め人のようになったから実感としてわかった。一カ月くらい時間を気にせず旅ができないならまず旅はできないのだ。だからつくづく勤め人には保養はあっても休養の旅はあっても旅そのものはできないことがわかった。
雲見という地名は変わっていたので記憶していた。ここからの眺めは確かにいい、ここは地名だけが記憶された。雲を見ていて富士が見えるという何か浮世離れした感じでいい。早春というと伊豆がいい、海と山と富士が見えるからだ。新幹線だと静岡に入るとくっきりと富士が見える、でもたちまち去って見えなくなる。
短歌で日本(にほん)というと何かぴんとこない、やはり日(ひ)の本(もと)、日本(大和)−ヤマトとした方が大和言葉でしまってくる。ただ日の本と大和はまた感覚的に歴史的に違うのである。もともと日高見の国が日の本のくにとなったとか大和の前に日高見の国がありそこには蝦夷も含まれていた。大和は奈良の大和という一地域の名前でありその地域が日本の国の起こりとなるから大和となると奈良を強く意識するのだ。大和言葉があってこそ詩も生きるのであり漢字では日本は日本でありえないというのも真実である。
富士山に関するものは膨大である。富士の俳句だけでも膨大であり富士を常時ながめる場所に住んでいる人は幸せだとなる。
富士山の辞書
http://bungaku.fuji3776.net/cat7/
(雲見温泉)
http://www.d2.dion.ne.jp/~kumomi/
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