集団就職の金の卵が故郷に帰る
(真野川の橋の上で)
真野川の橋でやはり川を見ている人がいた
「水がにごっているね」
「鯉はいるけどな」
「昔こんなじゃなかったな」
「昔というとどのくらい」
「わたしは50年ぶりに帰ってきたんです」
「ええ、とすると集団就職の人」
「そうです」
「じゃ、苦労しましたね」
「本当に故郷は変わってしまいましたよ」
「この辺は特にそうですね」
「なんかのんびりしようとしたけどこの辺はそうもならない」
「それは言えます、あまりにも変わりましたから」
集団就職というとき自分の暮らすで三分の一くらいが集団就職だったかもしれない、ただその時何なのかのみこめなかった。
自分は大学に行って遊んでいたからである。その差が大きかったのである。
集団就職の人は相当に苦労したと思う。
「水がにごっていないときは魚とっていましたね」
「ヤスとかで魚を追ってとっていた」
「あの頃は水がにごっていない、きれいな水だった」
「そうです、きれいな水でないと魚はいない」
「上流がダムになったりして魚をとる人はいなくなった」
その人は団塊世代だから同世代だった、だから同じ経験をしていた。
鰻釣りのことも知っていた。田んぼの畦道で穴に餌をついたミミズをつけた棒を入れて釣るのである。子供のとき父親につれていかれて見ていた
それがかなり待っていないとかからないから嫌だった、何か自分は待つのが嫌な性分だったのである。常に動いていないとだめなのである。
子供だからというのではなく今でもそうだからである。絶えず自転車で動き回っているからである。
鰻とか鮎もその時は大きくうまかった、それを料理するとき手伝わされた、家族みんなで料理した、それが思い出となっている、でもその家族もみんな死んでいなくなった
ただ思い出だけになってしまったのである。
それで今日同じ世代の人と話して思い出がよはがえったのである。
団塊の世代でも今になるとこのように故郷に田舎に帰ってくる人がでてきている
今までそういう人と会わなかったのが不思議であった
自分は同級会には出ていないからでもあるがそういう人と会っても不思議ではなかったのである。
集団就職、金の卵、全学連とか学生運動などは団塊の世代の時代の青春だったとなる
ただ学生運動と集団就職の金の卵の相違は大きかった
自分は学生でも遊んでいただけだからである。一方は油まみれになり狭い宿舎につめこまれて下町の中小企業の工場で働いていたからである。
実はそういう所でアルバイトしていたことがあったから知っている
何か自分が働いたというときアルバイトしかないのである。
自分は別に金に困っていたから働いていたのではないのである。
働く経験をしていただけだとなる
これからはこうして集団就職した人たちも田舎に帰る人が増えてくる、でもこの辺は帰ってものんびりできるところではないのが不幸である。
若い人が流出したりして世話する人がいない、人手不足になっているからだ
そして老人ばかり増えても市町村では負担になるだけだとなる
いくら金があっても働いてくれる人がいなくては金も役に立たないのである。
その人も釣りをしているのでスズキのことを知っていた、海には大きな蟹も上がってきているとかスズキが河口で見たとか知っていたのである。
もともと田舎の出なのだから知っている
そして言葉使いが東京弁とこの辺の相馬弁になっている、でも東京にそうして長くいるとなまりが出ないのである。だからこの人は故郷の人なのかと思った
訛りでお里がしれるというが50年ぶりとかなるともう半世紀であり訛りが出ない
それでもなんか帰って二年間いるからなまりがもどってきたともなる
でもやはりなまりだけはなかなか消えるものではない、東京でそれだけ長く過ごしたことがなまりが出ないということがそれを示していたのである。
ガラスの箱をのぞきヤスで魚とる写真
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