斉藤茂吉の馬の短歌を読む
(野馬追いに思う忘れられた馬のこと)
馬屋のべにをだまきの花ともしらにをりをり馬が尾をふりにけり
にんげんは牛馬となり岩負ひて牛頭馬頭(ごづめづ)どもの追い行くところ
馬車とどろ角(くだ)吹き塩はらのもみづる山に分け入りにけり
ほしくさの馬車なみ行きしかば馬はかくろふ乾くくさのかげ
しんしんと行きふるなかにたたずめる馬の眼(まなこ)はまたたきにけり
馬子ねむり馬はたたずむ六月の上富坂のをつかれてくだる
三宅坂をわれはくだりぬいななかぬ裸馬一つ淋しくくだる
馬一つ走りひびきて来るまの墓石店まえに泥はねかえる
あたらしき馬糞ありて朝けより日のくるるまで踏むものなし
おさなごの馬の貌(かお)なづなごむかな相馬の里の秋の日暮れぬ
野馬追いに馬いななきてよみがえる馬ありしとき糞もするかな
その旗のほこらしきかな同類の旗印の馬駆けてくるかな
人間は時代がすぎるとその時代のことがわからなくなる,相馬野馬追いというとき旗祭りとも言うがまた馬の祭りなのである。
ところが馬というものがわからなくなっている,でも戦前から戦後何年かは馬車屋とか馬を運搬のために使っていた,子供のとき馬車の後ろに乗って遊んでいたからである。
馬車はまもなくして消えた,でも馬との生活は人間には長い,それが馬はもはや生活の中にはない,だから野馬追いのときあれだけの馬が集まることで馬があった時代を思い出すのである。馬はあとは競馬馬の馬になってしまったからだ
斎藤茂吉の馬の短歌は集めたがこうして馬は活きていた,東京でも馬がいた,上富坂とか三宅坂がそうである。馬は運搬のために欠かせなかったのである。
野馬追いのとき馬糞が道に残る,これも馬とともに暮らしていたときは普通の光景であるそれで嫌がる人もいる,現代は馬のことがわからないから嫌悪感を感じる
でも牛舎では今でも汚いからにたところがある。
馬屋というものがあり曲がり屋として有名である。馬と一つ屋根の下で暮らしていたのである。曲屋は今でも会津辺りにまだ残っている,そこで生活している人もいる
牛はまだ肉にするにしろ牛乳にするにしろ生活の中で活きている,でも馬は野馬追いとかギャンブルのなかでしか活きていない,だから馬のことがわからなくなったのである。
この辺では馬を野馬追いのために飼っている,それで親しむことがある
子供が馬となじむこともある,だから他とはここは違っている
そうして馬でも牛でもいると情がはぐくまれる,相手が生き物だからそうなる
機械だと車などになると愛車となるが生き物のようにはならない,毎日のように交通事故がありぴりぴりしてぎすぎすしたものになる
そして切れる人間が生まれる,車は何か突然突っ走ってきて走りさるから切れるのであるそこに人間的情をはぐくむものがない
そうなると人間はどうなるのか?人間に情が失われて人間が残酷になってゆく,非情化してゆくのである。子供のときから動物と接していると情がはぐくまれることは確かである今はペットがその代わりをしているのである。
斎藤茂吉の歌は戦前のものが主でありそこに当時の生活が歌われている,それはあくまでも当時の生活の中で歌われたから今はそういう歌は作れないのである。
今の馬が野馬追いのときとか競馬でしか活きていないからそうなる
馬はそもそもモンゴルの草原のような場所にあっている,どこまでも疾走していける平原にあっている,だから馬の原産地は草原とか平原なのである。
とにかくこの辺は馬と縁ある場所である。馬を考える場所でもある
そこに野馬追いの祭りの意義がある
馬も津浪で流されたりして被害にあった,右田の牧場のあったところも流された
そこで見たのがおさなごと少女か馬の顔をなでていたの光景だった
他でも馬を津浪で流された家があった,この辺ならではの被害だったのである。
他に牛も流されたりしたのである。牛馬の被害もあったのである。
だから慶長津浪では馬も死んだと記してあるのである。
南部藩・津軽藩の海岸でも「人馬死んだもの3000余」という記録が残されている(『駿府記』
人馬というとき人間と馬が一体だったからこそ記されたのである。
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