雪深し(俳句十句)
(会津と東北などの雪に関するエッセイ)
会津なる大木一本雪深し
雪深く踏みて知るべし会津かな
雪深く代々の家重しかな
手仕事の技を伝えて雪深し
雪深く竹細工して長野かな
蔵の梁太しく籠る外は雪
雪深く黒ずむ柱年を経ぬ
雪深く巌の堅く譲らざる
雪深く黙しがちなる人の顔
雪ふるやマントの人や北の駅
雪深し訛りの強く北の国
雪深し烏の黒のなお黒し
(津軽焼)
土の色黒の素朴や雪深し
弘前や煉瓦の銀行朝の雪
区界に電車とまるや雪厚し
区界(くざかい)の雪の厚さやなお消えじ
立春もら近いけど東北は会津とか日本海側とか岩手でも青森でも山形でも雪である
福島県では会津が雪国だけど中通りでもそれほど雪はふらない、浜通りは二三回ふるだけである
それでどうしても雪国のことが実感として理解できないのである
ただ前にも書いたけど雪と言っても「心から信濃の雪に降られけり」という一茶は信濃の長野県の雪であり会津の雪もあり山形県の雪もあり岩手県の雪もあり青森県の雪もある
これらはみんな違っているのである、同じ雪でも土地によって違って感じるのである
弘前では朝の雪がきれいだった、それは雪に浄められるという感じの雪だった
そこに明治以来の古い煉瓦の銀行があるのもあっていた
そして雪というときテレビで長野県の戸隠(とがくし)のことを映していたがそこで竹細工をしていた、何かそれが雪国にあっている感じになる
なぜなら外は雪に閉ざされているとなると外で働くことができないからである
すると家に籠って仕事をするとなるとそうした手仕事になる
それは会津でも同じである、それで絵蝋燭と漆塗りの木工細工とかが発達した
雪国だとそういう家で籠って仕事することに向いているからである
こういうことは雪を知らないと実感できないのである
雪国から形成される性格もある、何か人間も開放的なくこもりがちになり口が重くなる
東北弁とか東北人の性格は雪国で寒いということで作られてきた
関西とかの言葉とあまりにも違いすぎるからだ、抑揚が違う、ズーズー弁である
それはやはり気候の影響が大きいのである
でも東北がどこでも雪がふるというものでもないし寒いとも限らない
宮城県とかは海に面している地帯は別に寒くないのである
それで方言で語尾がだっちゃだっちゃというのである
これはんだんだという口ごもるような言葉とは違う感じになる
何か相手に押し付けるような感じになる
宮城県は東北ではないというときそうなる、伊達政宗のような人は東北人ではないとなってしまうのである、
会津で良くいうならぬものはならぬということでもそうである
これはやはり雪国で頑固になり譲らない性格が形成されたのである
何か風土に影響される、だから津軽焼は土の色と黒になっている
この黒が何か冬に合う、家でも中に黒の煉瓦のようなものをあしらって落ち着く空間を作り出している映像を見た
黒がかもしだすものは何か重厚で落ち着くとなるからそういう作りにした
私は「家」といふものが子供の時から怖しかつた。それは雪国の旧家といふものが特別陰鬱な建築で、どの部屋も薄暗く、部屋と部屋の区劃が不明確で、迷園の如く陰気でだだつ広く、冷めたさと空虚と未来への絶望と呪咀の如きものが漂つてゐるやうに感じられる。住む人間は代々の家の虫で、その家で冠婚葬祭を完了し、死んでなほ霊気と化してその家に在るかのやうに形式づけられて、その家づきの虫の形に次第に育つて行くのであつた。
「石の思ひ」坂口安吾
雪国の家となるとやはりこんな感じになるのだろう
岩手県の区界(くざかい)は標高が高く雪が厚く積もっていた、それは春になってもなかなか消えないのである、その区界とはまさに字のごとく境なのである
浜通りだともう梅が咲いた、意外に早いなとも見た、でもまだまだ東北の半分以上は冬である、浜通りでも二月に雪がふりやすい、東京が降るとここも雪がふりやすいのである
とにかく雪の感覚がここではわかりにくい、いつでも曇って雪がふりつもるというのも嫌になるだろう、そういう所に住んでいれば自ずと性格も陰気になって不思議ではないのである、浜通りの人間は比較的明るく開放的なのは海に面して気候がいいからである
雪はほとんど降らないからである
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