会津の旅の短歌30首
(湖南)
街道の湖南の蔵の宿泊まる菖蒲の咲きて心にしみぬ
風鳴るや木立騒ぎて夏の日に荒巾木(あらはばき)神社あるかな
街道の芒に暮れむなお遠く虫の音あわれ会津に向かふ
(猪苗代湖)
猪苗代湖その色碧く心しむ火を噴く後の磐梯山見ゆ
猪苗代湖その岸辺の松幾本や家居ともしく虫の音聞きぬ
猪苗代雪のふりけりその岸に秀夫は育つ雪の清しも
猪苗代湖その岸にふる雪清し心に雪の映りて去りぬ
(会津市街)
雨しとと桐の花咲き誰が眠る会津の墓地を我が尋ぬかな
松静か桐の花咲き磐梯山形優美に聳えけるかも
氏郷の会津に死にぬ近江よりその歳月や花は散りにき
歴代の会津の殿も眠りける墓地を訪ねて秋の蝉鳴く
三人の女(おみな)の墓の並びけり城に仕えてここに死すかな
大川の流れひびきて広ろらかに会津の国や秋となるかな
会津なる謂れの古く大古墳鏡とともに冬深むかも
みちのくに会津のあれや山深く暮らせる人や冬深むかも
(西会津)
ここよりし西会津なり別れ道立木観音に秋の夕ぐれ
山の上会津の奥や戦いし藩士のしるし秋深まりぬ
阿賀野川新潟にそ流れつつ日本海にそ秋の陽没りぬ
新津駅会津の方に雪の嶺見えて朝たつ電車なかるかも
阿賀野川船運に栄ゆ津川かな雪に埋もれて我が踏み帰る
(喜多方の喫茶店)
喜多方の積もれる雪に蔵の中梁の太くも黒光りしぬ
(伊南)
そそり立つ巌に轟く流れかな心一つに戦い果てぬ
千の山競い聳えてひしめきぬなお奥に山会津の夏かな
鬼百合の咲きし会津やたおやめももののふの心戦いに死す
桧枝岐遠くにあれや米食えず蕎麦にヤモリを食いてしのぎぬ
古りにけるいさすみ神社の老木に我がよりあわれ秋深まりぬ
会津の奥の深しも秀麗に聳えし山や秋の夕ぐれ
会津なる奥の山路を分け入りて萱に埋もれし農家ありしも
雪のふり雪踏みてこそ会津にそ住みし心を知らるべしかな
沼一つ奥にしあれや何ひそむ散りし木の葉の浮きて静まる
昭和村秋に来たれる鳥の鳴く声のすみにつ畑に人あり
舘岩の奥にしあれや境なるさえぎる山や秋となるかな
自刀せし親子のありぬ雪深く薩長の恨み残りけるかな
会津にそ灯ともりあわれなおしも雪のふりにけるかな
雪うもれ会津の墓や誰が眠る代々住みし家にしあるかな
しんしんと冷える夜なり会津にそ住みてその心知らるべしかな
(会津嶺)
会津嶺の国に生きなむ命かな同胞(はらから)友の絆強しも
会津嶺の国に生きなむ水清し母父ここに我をはぐぐむ
山々の重なり高くひしめきぬ守りの堅く国を守らむ
奥にある秀でし山の隠されて志操の堅く国をし思ふ
次は国とは何かについて万葉者を例にして書いています
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