2013年04月10日

みちのくのアイディンティティは何か (今も霊場的なものがあるのではないか?)


みちのくのアイディンティティは何か

(今も霊場的なものがあるのではないか?)


みちのくにともに死なむや花曇り


みちのくのアイディンティティはどういうものなのか?アイディンティティには風土的、地理的、政治的、文化的、歴史的アイディンティティとか重層化しているから一つのアイディンティティで一体化はない、基本的には地理的風土的アイディンティティが基本である。地理的風土的アイディンティティからみると会津と浜通りは全く異次元の世界なのである。山のアイディンティティと海のアイディンティティでありその文化も根本的に違ったものとなる。みちのくといっても広いから一くくりにできない、相馬藩のアイディンティティ歴史的地理的にある。地理的に見ると水境峠を越えて川俣に出ると安達太良山が見えるから山の領域に入ったことになる。浜通りにはあのような大きな山がないからだ。そして川俣から飯館の方をみると山がさえぎっていてあれではなかなかこの峠を越えてゆくのは難儀だなと実感した。それは自転車だから余計にそうだった。かなりの坂を上らねばならないからだ。だから自然的地理的境界線があの山になっていることは理屈ではない、地形によってあらかじめ定められていたのである。

ただ飯館村が相馬藩になったのは経済的理由かもしれない、川俣から飯館に行くより険しい山を越えねばならない、八木沢峠を上ってみればわかる。飯館村は標高が高いから夏でも涼しいし冬は寒い、だから飢饉もあった。稲作には適していなかったのである。塩の道があり松川浦の原釜から塩を運んだということで飯館村は中継所になっていたから経済的役割が大きかったかもしれない、ともかく相馬藩に組み入れられたのである。相馬藩は六万石だけどアイディンティティをもつには適度の広さであった。あまりに広いとアイディンティティをもちにくい、中国のような国がどうしてアイディンティティをもつのか?それは日本だって広いのにあれだけ馬鹿でかかったら同胞だという感覚もなくなる。だから三国志になり熾烈な争いとなったのである。もともとあれだけ広い国をまとめること自体今でも無理なのである。


みちのくというとき伊達藩は伊達政宗の時一番政治的結合があった。政宗という英雄が出たためにそうなった。それからみちのくは政治的結合はなかった。それがわかったのは明治維新のとき戊辰戦争のとき東北連合を目指してもばらばらになってたちまち西軍に制圧されてことでもわかる。内部分裂して連合できなかったのである。みちのくは最初は日高見国としてアラハバキ族がその子孫だったかもしれない、それが蝦夷の一部としてあったのかもしれないが大和朝廷に征服されて不明となった。みちのくといっても実際はあまりに広すぎるのである。今回の津浪で意識されたことは津浪に襲われた海岸線が海の文化としてのアイディンティティをもつ地域ではなかったかと再認識した。海のことは忘れられていたけど海によってつながっていた同じ文化圏であったと思えたのである。海の交通などは遺跡としても残りにくく船も沈むから忘れられやすいのである。伊達政宗はヨ-ロッパに使節を派遣したのものやはり松島辺りが石巻でも一つの海の文化圏としてあったからできたことである。

だから明治維新のとき榎本の咸臨丸が寒風沢島によって函館に脱出した。そして函館の五稜郭で蝦夷共和国を作ろうとしていた。だから東北連合ができて榎本が指揮すれば西軍と対抗できたかもしれない、西軍は薩摩長州連合ができたから幕府に対抗できたのである。ただ東北にはもともと政治的には結合するものがなかったのかもしれない、会津はどこまでも会津だったし他も一体化しなかったのだろう。

地理的には仙山線で行くと山形の山寺にでる。そこにトンネルがあり春でも山に雪が見える。トホネルをぬけると雪国だったというのにぴったりなのである。山寺は霊場であり「静けさや岩にしみいる蝉の声-芭蕉」となる場だった。あそこも境界線としてわかりやすいのである。

日本ではあまり川が境界線とはなりにくい、大きな長い川がないからである。ドイツだったらライン川はロ-マとゲルマンの明確な境界線であり風土も文化もそこで線が引かれたからわかりやすいのである。大陸には平坦な地が多いから川が境界線の役目をにないやすい、日本は山が多いから山が境界線となる。ただ仙台から平泉や盛岡方面に行くのにはあまり境界線を意識しない、高い山にさえぎられるわけでもないからだ。みちのくをふたわけ・・・この蔵王が境界線になるとは思えない、ただ相馬から蔵王は見えるからそれなりに蔵王は東北の象徴であるが境界線となっているのともちがう。そもそもみちのくというのはやはり平泉までの芭蕉の奥の細道の旅の行程がみちのくという感覚なのだろう。するとみちのくのアイディンティティは平泉までとなるのか?青森となると遠すぎるのである。


みちのくの特徴というと山寺や恐山などあるが霊場だったかもしれない、霊が眠る場所としてふさわしい場だったのかもしれない、奈良だと吉野山のような性格があった。大阪とか江戸は極めて政治的経済的場だった。みちのくの辺境はそうした政治的場となったことがない、伊達政宗のときだけ一時的になった。政治経済的場として日本の役目をになっていなかったのである。だからみちのくは霊場的性格がありそれにふさわしい場だともなる。確かに政治的経済的には後進の地域なのだが霊的になにか日本の故郷のような感覚があるかもしれない、大阪のような商人の世界とはあまりにも違っている。人間もまた違いすぎるのである。東北人はまず自分もそうだが商人には全くあわない、みんな無口な農民的気質なのである。いろいろ変わっていろいろ人がいるにしろ以前として東北人気質は変わらないところがある。東北にはまだ辺境意識がある。それは悪い方にとれば遅れているが現代の文明から逃れた場所として安らぎを与える場所としての役目をになうのには良かった。ただ原発事故などによりそがれてしまった。


日本でもやはり地域地域で違った文化を醸成されてきたしそれを基にして発展するべきなのだ。
九州は外国の窓口で役割になったのは地理的位置からだった。四国が霊場となったのはやはり峻険な山が多いことにもあった。多少みちのくとにている。山が多いから経済的発展をはばまれたのである。ともかくみちのくは霊場的な所がありここでだからともに死なむ・・という感覚にもなる。
死に場所ふさわしい場だともなる。ということは老後にふさわしい場だともなる。ともに死ぬ場所だということでアイディンティティがもてる場だともなる。だからここであまり世俗の競争を持ち込むことは向いていない、大阪のようになることは地域的特色がなくなる。人間は60すぎると死を絶えず意識する。すでに一割は死んでいる。すると死ぬ場所が大事になるのだ。原発事故で避難した老人はどうしても故郷に帰り死にたいと言っていた。それはまさに根源的アイディンティティの場所が故郷になっているからだ。みちのく全体をアイディンティティとしてあるがやはりまたさらに濃厚なアイディンティティの場所がそれぞれの狭い故郷なのだろう。


やはり東京とか大阪とかあういう場所で人は死にたいと思うだろうか?人間も自然の一部であるから死ぬなら自然に帰りたいという願望が自然に芽生える。ビルの谷間で死ぬのは嫌だとなるのが正常な感覚ではないだろうか?ともに死なむ・・という場所はやはり共同のアイディンティティの場であり連帯を生むのである。みちのくという同じ大地に眠る、死ぬということは何か安らぎを覚えるのである。ただみちのくといっても果たして会津の人はどういう感覚になるのか?また山形の人はどうなるのか?盛岡の人はどうなるのか?青森の人はどうなるのか?やはりそれぞれ違っていてみちのくで一くくりにはできない問題もある。でも歴史的アイディンティティとして形成されたものはやはり根強くある。だから陸奥から生まれのはみちのくらしいとなる。宮沢賢治の文学などは別にみちのくらしいともならない、みちのくの大地とどうつながるのか、天才だからそういう土地の感覚から逸脱している。自分の場合は普通だからみちのく的になっているのかもしれない、いづれにしろ歴史は地理だというとき地理がわからないとあらゆるものがわからないのだ。ただ地理とか風土の問題は相当奥深いからなかなかわかりにくいのである。福島県で会津に住まないものは会津のことはなかなかわかりにくいのである。あれだけの山国でありその山のことがわかりにくいから別世界になってしまうのである。


桜の季節に春に死ぬのは気持ちいいことなのだろう。


ねがはくは花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月の頃 西行


春死ぬということは願ったのはやはり花を心に死にたいという日本人的美意識が西行によって生まれた。寒いとき死ぬのは何か荒寥としている。春に死ぬとなにか華やかだともなる。春の光につつまれて痛みもなく眠るように死んだら最高だとなる。ただともに死なむ・という感覚はここにはいない、個人的なものである。ただ死には個人的なものと共同的なものが必ずある。墓地自体が共同性をもっていることは確かである。江戸時代では庶民は墓がなくホトケッポとか共同墓地に一緒に葬られていたことでもわかる。もともと共同性の中で生きていたから一緒に葬られることは自然だったのである。今は共同性が得られにくいから死ぬ場所をどうしたらいいとか悩む時代なのである。

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