月見草(湿気の国、日本の文化)
家の前花を飾りてしわれかな誰か見なむや雨しととふる
草深く今日も咲きにき月見草何を言わむや雨しととふる
この道に今日も隠微に日影蝶舞いつつ暮れぬ草深しかも
月見草草深く咲き日影蝶今日も舞いつつ夕日さし暮る
岩にしみいる雨
しとしとと石に雨ふる
しとしとしととしと
石にしみ入る雨水
石は動かず千歳の重み
石は苔むしもの寂び
徒言を言わず古りぬ
石は隠れて重みを増しぬ
しとしとしとと雨のふり
蝉時雨のここにひびき
その声の岩にしみ入りぬ
しとしとしとと湿り気の国
日本の石は皇(すめらぎ)の巌となりぬ
ヨーロッパの)牧場的風土ーーー理性の光が最もよく輝き、(日本の)モンスーン的風土はーーー感情的洗練が最もよく自覚される
モソスーン域においては、暑 さと結び付いた湿気すなわち 「湿潤が 自然の恵み を意
味す るか ら」[和辻,1979,p.30]で ある。 「暑熱 と湿気 との結合」のお かげ で植物 は豊 かに茂り、動物 たち も繁 栄す る
和辻 哲郎 著 『風 土』
日本は湿気の国だから畳になり湿気に対処する文化が生まれた。畳は湿気を吸う感じがする。湿気だから湿潤だから植物も草も繁茂する。繁茂する速度が早くなる。ヨ-ロッパでは雑草がなく牧草地帯になるから自ずから牧場になっている。イギリスなどは丘陵がゴルフ場になっている。自然がゴルフ場になっていたのだ。
うちしめりあやめぞかをる時鳥鳴くや五月の雨の夕暮
うちしめる・・これがなんとも日本的なのである。菖蒲は梅雨の時期に咲き湿りを象徴している。
故郷の墓地の細道土しめり猫の歩みて吾も歩むかな
この歌は斎藤茂吉のまねたけどその本歌がわからなくなった。ただ墓地の土が湿っているということがいかにも日本的だったのである。この湿りはまさに命に通じていた。魂に通じていた。墓が乾いていたらそこに命もない、霊魂もない、花だって土が湿っていないと咲かないからだ。でも日本の湿潤の風土ではそうでも世界でそうではない、別に墓は砂漠にも乾燥地帯にもあるからだ。だから世界では日本のように感じないのだ。ただ湿っていることが外国でも同じ様な意味になっているのがある。
この単語、元々は「体液」のことを表しました。humid (湿った)とか humidity (湿度)という単語がありますが、実は humor はこの humid や humidity と語源的につながりがあるのです
湿っていることがユーモアになっている。ドライが乾いているがその反対語でありドライになるということは何か割り切ったものとして冷たいものともなる。日本には乾いたが別に英語のようにドライという意味にならない。英語はドライな風土に由来しているともなる。ただ英語の基がドイツ語だとするとドイツは霧深いからそうともいえない、英語の元がドイツ語でありドイツ語の元は印欧語とかなると乾いた土地から生まれた言葉につながっているからかもしれない、ドライということはやはり砂漠とかの乾いた風土から生まれた言葉なのである。その反対としてhumidがありhumorがありhumanがある。humanは人間湿った所から生まれたということでは共通しているのかもしれない、湿りは水であり生命の基であるからそうなる。人は湿りがなければ生きていけないのである。wetが湿っているだからやはり機知も湿りから発している。ただドライという感覚は日本人にはないのである。
割り切るというとき割れるであり乾いたではないからだ。
湿りというとき「静けさや岩にしみいる蝉の声」この芭蕉の句が生まれたのは極めて日本的風土からだった。まずしみ入るという言葉が他にはない言葉である。濡れた岩にじいじいと蝉の声がしみ入ってくる。滴ってくるというとか言葉もそうである。したたるという言葉も他の言葉にはなく訳せないのである。ただこの句ができたのは沈黙の世界の江戸時代だったからである。江戸時代の文化は鎖国により閉鎖された結果として日本的感性が特別磨かれた時代だったと解釈するのも一理ある。
純粋な日本文化が300年の間に醸成されたのである。だから江戸時代にしかこうした句は作れないから不朽のものとなっている。現代は喧噪騒音の時代だからこうした内面的深さにいたらないのである。
月見草なんかも何か雨とにあっている。日影蝶というのも何か田舎にあっている。毎日隠微に何羽か舞っているのだ。
ともかく今日も雨であり今も雨がふっている。梅雨の時期が今年は長がかった。梅雨から秋になるかとも思える。でもようやく夏らしい暑い日がやってくるらしい。夏がないのも淋しいとなるから30度くらいだったら夏もいい、ただ西のように35度になったりしたらもう住みたくなくなる。気候の変化に弱いので暑さすぎるのも寒すぎるのも嫌なのだ。だから福島県の浜通りは気候的にいい場所だったのである。
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